より安全で使いやす い学校家具の検 証と研究
−これまでに導入された事例の検証とリデザイン−
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兵頭敬一郎
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・山本幸雄
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・大野善隆
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製品開発支援担当・ **
農林水産研究指導センター林業研究部
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Pr oduc t Dev el opment Gr oup, **
Oi t aPr ef ec t ur al Agr i c ul t ur e,For es t r yand Fi s her i es Res aer c h Cent er F or es t r y
Res eac h Di v i s i on
要
旨
平成12年度の「地域公共施設の木製化研究」,平成13年度の「木の学校家具」提案研究を基に,平成14年
度から実用化した学校用机・椅子は6年間で日田市内の全小学校に,平成18年度から3年間で別府市内の全中学
校に導入され,合わせて約1万セットが利用されている.最も初期に導入された机・椅子は導入からすでに8年が
経過しており,破損(一部ほぞ抜けなど)など様々な問題が生じている.そこで,リデザインと強度試験による安
全で使いやすい学校家具の実用化を目指す.
1.
目的
児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深め
るため,材料としての木材の良さやその利用の意義を学
ぶ「木育」教育活動の推進が,平成 18 年 9 月に閣議決定
された「森林・林業基本計画」に明記されるなど,昨今
学校現場で木材の持つ温かさ,柔らかさが見直されるよ
うになってきた.
当センターでは,平成 13 年度から学校家具の開発に取
組 ん だ . 平 成 14 年 か ら 開 発 し た 学 校 家 具 の 机 や 椅 子
(Fi g. 1)も日田市や別府市で毎年,導入が進み,これま
でに 10, 000 脚近くが教育の現場で活用されてきた.
最初の導入時から約8年が経ち,不具合や使い勝手で
課題が生じていると推測される.そこで,平成 22 年度に
は,これまでに導入した机や椅子の不具合や課題を明ら
かにするため現状を調査した.その結果,机の 10%,椅
子 の 14%に 何ら か の不 具合 が生 じ てい るこ と が明 らか
に な っ た . 机 の 不 具 合 の 内 訳 は , ほ ぞ の 抜 け が 全 体 の
4. 3%,あり桟のずれが全体の 4. 0%,材の欠けが全体の
0. 6%,残りがほぞの抜け,あり桟のずれ,材の欠けの複
合であった.椅子の不具合の内訳は,ほぞの抜けが全体
の 9. 5%,材の欠けが全体の 3. 1%,残りがほぞの抜けと
材の欠けの複合であった.
Fi g. 2 ほぞの抜け
Fi g. 1 開発した学校家具の机と椅子
6
2.
研究内容
平成 22 年度の状況調査の結果,机,椅子に共通の課題
として,①ほぞの抜け(F i g. 2),②材の欠け(Fi g. 3),
机のみの問題として③あり桟のずれ(F i g. 4)があること
が分かった.①ほぞの抜けについては,ほぞの強度を実
験により再確認することとし,②材の欠け,③あり桟の
ずれについては設計変更で対応することとした.
①ほぞの抜け対策として,かん合度の検討,ほぞ形状
の検討,接着剤塗布方法について検討した.
2. 1 ほぞの強度試験
2. 1. 1 かん合度の検討
幅 33mm× 厚 45mm× 長 900mmの試験体作製用スギ材 240
本の曲げヤング係数を測定し,ヤング係数の分布が同じ
になるように 15 グループに分けた.その後,試験体作製
用スギ材を長さ 450mmに切断し T 型試験体を作製し,引
張り試験( Fi g. 5) を行った.引張り試験にはインストロン
社製万能材料試験機 5568(荷重容量 5kN)を用いた.試
験速度は 2mm/ 分とした.
かん合度の条件は,ほぞ穴の大きさを幅 14mm× 厚 33mm
× 深さ35mmとし,ほぞの大きさを長さ33mm,幅方向で
14. 0mm,14. 1mm,14. 5mm,の3 条件,厚方向で33. 1mm,
33. 5mm,34. 0mm,34. 5mm,35. 0mmの 5 条件,計 15 条件
( Fi g. 6) とした.接着剤はほぞの頭面,ほぞ穴の底面以外
のすべての面に塗布し,はみ出した接着剤はウエスで拭
き取った.
Fi g. 3 材の欠け
Fi g. 4 あり桟のずれ
Fi g. 5 試験の様子 Fi g. 7 ほぞの形状 Fi g. 6 かん合度条件
厚方向
幅方向
a.留めほぞ b.通しほぞ
c.通しほぞ+ピン d.通しほぞ+くさび
7
座面の曲面加工 床すりの取り付け
Fi g. 9 椅子の設計変更 3D シミュレーション Fi g. 10 学校家具普及リーフレット 2. 1. 2 ほぞ形状と接着剤の塗布方法の検討
幅 33mm× 厚 45mm× 長 900mmの試験体作製用スギ材 112
本の曲げヤング係数を測定し,ヤング係数の分布が同じ
になるように 8 グループに分けた.ほぞの形状(Fi g. 7)
を表 1 のとおりとし,2. 1. 1 と同様の試験を行った.
接着剤はほぞの頭面,ほぞ穴の底面以外のすべての面
に塗布し,はみ出した接着剤はウエスで拭き取りと,接
着剤はほぞ穴の幅面のみに塗布とした( F i g. 8) .
2. 2 設計変更
ほぞの引き抜き試験と同様にほぞを上記のb,c,d
の3タイプとし,家具として組み立てて J I S の強度試験
を行なった.2011 年にJ I S S 1021 学校用家具−教室用
机・椅子が改正となり.主な改正点は下記のとおり.
・身長 173c m前後の需要対応のため 5. 5 号の追加
・主要寸法のみ規定しその他の寸法を規定から削除
机の天板は 取り替え ができる よう蟻 桟で固定 しており ,
力をかけるとずれ るた め , ずれ 防 止の 対 策 を行 な っ た.
また,旧 J I S で細かく規定されていた前脚の左右をつ
なぐ貫の取り付け位置の寸法規定が新 J I S では緩和され
たため,下方に貫を取り付けることとした.
この貫は強 度的に 有効であ るが, 足の動き を妨げ る可
能性もあるため任意とし,導入側の意向に合わせて取り
付けも可能とする.
○ 机の設計変更のポイント
・ずれ防止のため天板と蟻桟をビスで固定
・前脚下方に左右の脚をつなぐ貫の取り付け(任意)
・天板裏側左右に手がかりとなる溝をつける
椅子の脚部 下端の 小口割れ 防止の ため,あ らかじ め床
すりを付けることとし,座り心地の向上のため体が接触
する座面と背面を多少湾曲させることとした.試作する
前に Fi g. 9 に示す3Dシミュレーションにより確認した
○ 椅子の設計変更のポイント
・あらかじめ床すりを取り付ける
・座面と背面の多少の曲面加工
2. 3 教育委員会の評価
県産木材による学校家具のニーズを確認するため,県
内各市町村の教育委員会の担当者から聞き取り調査を行
った.訪問時に現物を確認してもらい,導入の課題や今
後の方向性を伺った.また,導入された教室の状況や,
学 校 家 具 の 形 状 や 各 号 の 寸 法 等 の 仕 様 が わ か る よ う
Fi g. 10 のとおり A4 のリーフレットにより情報提供した. Fi g. 8 接着剤塗布の様子
ほぞ の みへ の 塗布 ほぞ と ほぞ 穴 への 塗 布
Tabl e 1 ほぞの形状
ほぞ穴
(幅× 厚× 深,mm)
ほぞ
(幅× 厚× 深,mm)
ピン,くさびの形状など
a.留めほぞ 14× 33× 35 14.1×33.5× 33 −
b.通しほぞ 14× 33× 45 14.1×33.5× 45 −
c.通しほぞ+ピン 14× 33× 45 14.1×33.5× 45 ブナ,直径12× 長33mm
d.通しほぞ+くさび 14× 33× 45
14.1×33.5× 45
切欠き,幅3× 長32mm
ナラ,上辺2× 底辺4.5× 高32
× 厚14mm
8
3.
研究結果及び考察
3. 1 ほぞの強度試験
3. 1. 1 かん合度の検討
試験体作 製用 スギ材 の密度 は 426kg/ m 3
, 曲 げヤン グ係
数は 4. 0GPa だった.試験の結果を F i g. 11 に示す.かん
合が厚方向0. 0,幅方向0. 1mmの平均がそれ以外の平均
と比較して低いものの,ほかのかん合条件の場合平均が
おおむね 11kN 前後でほぼ同程度であることが分かった.
ほぞのかん合について,ほぞの寸法がほぞ穴よりも小さ
くなるマイナスかん合は許容されないこと,ほぞの寸法
がほぞ穴に対して大きすぎる場合ほぞ穴端部が割れる危
険性があることを考慮し,ほぞの寸法を厚方向で 0. 1mm,
幅方向を 0. 5mmほぞ穴よりも大きくすると良いことが分
かった.以下の実験では,このかん合条件とした.
3. 1. 2 ほぞ形状と接着剤の塗布方法の検討
試験体作 製用 スギ材 の密度 は 368kg/ m 3
, 曲 げヤン グ係
数は 6. 3GPa だった.試験の結果を F i g. 12 に示すほぞ,
ほ ぞ 穴 両 方 に 接 着 剤 を 塗 布 し た 場 合 の 平 均 は お お む ね
8kN 前後でほぼ同程度であることが分かった.通しほぞ,
通しほぞ+ピン,通しほぞ+くさび等の形状にすると,留
めほぞよりもコスト上昇の要因になることから,留めほ
ぞが良いことが分かった.
いずれの形状でも,ほぞ,ほぞ穴両方に接着剤を塗布
し た 場 合 は , ほ ぞ 穴 だ け に 塗 布 し た 場 合 に 比 べ 50∼
100%平均値が向上することが確認できた.
3. 2 設計変更
設計変更したすべての学校家具についてJ I S の強度試
験に適合した(Fi g. 13).机については下部の貫を取り付
けた状態で試験を行ったあと,貫を切り取って試験をし
たがどちらも適合した.
3. 3 教育委員会の評価
地域の木材を使用した学校家具について,市町村の担
当者からの評価は高かったが,予算面で課題があること
がわかった.中には,校舎の新築や増築に合わせて,木
製学校家具導入の予算化を検討するため,家具製造企業
に見積りを依頼する自治体もあった.
木製学校家具が県内で製造できることを知らない担当
者が多く,導入の機会を逃さないためにも,今後も継続
的に情報提供を行い,導入支援を行う必要がある.
4.
まとめ
平成 14 年度から県内に導入された机,椅子の現状を調
査したところ,およそ 7, 500 セットのうち机 10%,椅子
14%に何らかの不具合があった.机, 椅子に共通の課題と
して,ほぞの抜け,材の欠け,机のみの問題としてあり
桟 の ず れ で あ る . ほ ぞ の 寸 法 に つ い て は , 厚 さ 方 向 で
0. 1mm,幅方向で 0. 5mmほぞ穴よりも大きくするのが最適
と考えられる.接着剤を,ほぞ,ほぞ穴両方に塗布した
場合,ほぞ穴だけに塗布した場合よりも 50∼100%強度
が向上することが分かった.
本研究での試験結果を基に,県内小中学校への県産木
材を使用した,より安全で使いやすい学校用机,椅子の
導入支援と企業への技術支援を継続して行なう事とした. Fi g. 11 かん合度試験の結果
0.0 0.1 0.5
Fi g. 12 ほぞ形状と接着剤の塗布方法試験の結果
Fi g. 13 学校用椅子の J I S に基づく強度試験
9